教員(国語科)の石井克生です。
写真は、むかしのアイロンです。(「いわき市暮らしの伝承郷」所蔵)
いま、皆さんの家にあるものと比較してみてください。
形状が全然違うところと、どこか似通っているところがありますよね。
異なるところはどういう理由で変化したのでしょうか。
各家庭に「当たり前」に電気が通っているという、
インフラ整備が進んだということもあるでしょう。
はたまた人間工学に基づく機能性や利便性を追究した、
現時点でのあくまでも「暫定的な結果」かもしれません。
一方、似通っているところは、なぜその形状を留めているのでしょうか。
それにも現実的・実利的な理由があるはずです。
文化学はえてして「何の役に立つのか分からない」ものです。
好事家(物好きな人)の学のようにもいわれます。
しかし、アイロンひとつの形状から、政治・経済・科学技術などの課題を
照射することができます。
今日のアイロンは、おそらくほぼ完成型になっているものと推測できます。
しかし、新製品は次から次へと出てきます。
少しの差異を強調しながら、です。
なぜでしょうか。
そうしないと家電メーカーは売り上げが上がらないからです。
したがって、使い勝手だけでなく、今日の「ムード」のようなものを取り入れながら、
また創りながら、製品を開発しているはずです。
ここには理工学・経済学・心理学・脳科学などのさまざまな知見が含まれています。
文化はこの世の中のどれとも切り離せず、
よって、この世のどれをも体現しているのです。
新聞委員会顧問 石井克生